<鍛造ピストン開発秘話>

鍛造ピストン開発までの試行錯誤、紆余曲折の程を書いてしまいました。
お暇な方はどうぞ、ご覧ください。(笑)

最初に、ATVをこよなく愛し、より早く、より強く、と血道をあげる皆様に、このページが
何かの役に立つ時が必ず来ると信じつつ、叱咤激励の中、お知らせ申し上げます。

ATV50の歴史はまだ浅く、平成14年に最初のATV50が発売されました。
最初は4stの50ccで正直、速度も加速も?のATVではありました。
そして、平成15年2月ついに、UNILLI製ATV、初代パンサー502sが発売されました。
以来、チューンナップパーツ、アフターパーツの開発が進み、現在にいたります。
チャンバーが相次いで開発され、ハイスピードプーリーやキャブレターも次々に
発売され、環境はより高速に、より苛酷になっていったのです。
同時に、レースの世界でも100m先で50cm前に出るため、圧縮圧力もどんどん
上がって、10:1を超え、ついに13:1などと少々無謀ともいえる例も出てまいりました。
点火時期も変更され、シリンダーやピストンにとって苦難の時代の幕開けとなります。



初期の鍛造ピストンは左の写真のように掃気孔が開いておりました。 (右は現在の鍛造ピストン)
ピストントップ形状も、よりハイコンプレッシャーなものに変更されました。(右写真)


現在販売されている鍛造ピストンには掃気孔がありません。
これには、いくつかの理由があります。
まず、ピストンについた掃気孔の働きですが、上死点に達したピストン下部
で、負圧下にあるクランクケースに混合気を充分にかつ速やかに吸入させる
事にあるのです。
つまり、末端までガスを充満させるために通路として開けられた穴なのです。
しかし、10000回転を超える運用が当たり前のレースでは、ピストンスカート
部分には(特に掃気孔側下部に)擦過傷ができやすくなります。
これは、ピストンがバランスをくずしてピストンの首振り現象からできる傷と思われます。
精度の低いピストンの場合ですと簡単に焼きついてしまいます。
この原因はピストンを良く見ると一目瞭然です。
ピストンの片側だけに大きな穴を開ければ、重量、抵抗のバランスが崩れるのは当然です。
さらに、掃気の瞬間はピストンに横からの負圧がかかるため、ブレやすくなるのです。
シリンダーホールは上死点のボア径よりスリーブボトムのボア径の方が大きく出来ている為
隙間が大きく、横からの力には首振りしやすい構造になっていたのです。
超高速で上下運動するレース用2stピストンでは循環効率よりバランスが重要に
なる訳だったのです。(ホント!)



(左写真)高速回転でつきはじめた擦過傷・症状はまだ出ない。 傷が大きくなり、焼付き寸前の状態のピストン(右写真)
低回転(8000rpm以下)の運用では左の写真程度からキズが進行する事は少ないが、9000回転以上になる運用では
キズの程度が進行し、右写真のような状態になりやすく、首振りによる打刻音が出はじめる。


そこで、試しに穴のないピストンで回してみると、実にスムーズに超高回転まで
回ってしまうではないですか。(当社テストでは14000rpm(負荷)まで回りました)
当初の鍛造ピストンは、実は軽量化と称して(笑)掃気孔が開いていたのですが
そういう理由で掃気孔をふさいでしまいました。オーマイガーッ!
7000rpm程度を上限にした標準的運用の場合は掃気孔が効率化に有効なのですが
10000rpmを超えて13000rpmすら超える勢いの運用では少々の循環効率改善より
ほんの僅かな違いの精度やバランスを取る事が何にも増して優先されるのです。
その分少々重量が増えてしまいましたが、回転質量は大きい程トルクは出ます
ので回転を上げる事が出来るのならば、むしろ好都合と判断したわけです。
(気のせいか、一次圧縮も増えたような気がします〜なははは)
代わりに、軽量ピストンピンや軽量高速ニードルベアリングの併用で軽量化も
充分可能ですが、掃気孔を新たに一個、ドリルで開けるという荒業もあります。
この場合、バランスを取る為反対側のスカート部分も軽く削り安定させる事が
重要ですが、若干、一次圧縮が下がる傾向があるようですので、勇気のある方は
クランクケース内の肉盛りやレースクランクに換えて一次圧縮を補正しましょう
(それで壊しちゃったら、また買ってね♪ なーんて…笑)



鍛造ピストンの滑らかで均一なピストンの内側 (左写真) (写真右) 鋳型ピストンの内側、一目瞭然の違いです。(新品)


欠けたり、溶けたり、爆発したりの不良ピストンの皆さん!(笑)


また、ピストントップの均質性がデトネーションや穴あきの予防になります。
鋳型のピストンでは、極めて仕上がりが不均一で温度分布が特定できず、異常加熱
によるデトネーションやスポット加熱で強度低下を起こしやすかったのです。
鍛造ピストンは、極めて均一かつ滑らかに美しい仕上りで、常識を大きく超えた
高圧縮比下においてもその耐久性は抜群に優れており、その耐圧耐熱性は限界到達
までの時間を大きく伸ばす事ができたのです。
鋳型ピストンは使用前に表面はもちろん、裏側まで、充分バリ取りを行ってから使用
するようにしましょう。(特にピストントップのエッジ部分やスカートの裾部分)

しかし、これは超高圧、超高回転での運用時を想定したものであり、逆に低回転
運用を主とするユーザーには、その効果を充分に体感できないかもしれません。

ピストンの改造、チューンナップは危険を伴いますので、充分に
注意すると共に、自己責任において作業してください。


moto-ALICE
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